「清家様」
自室で書き物をしている清家のもとに、小間使いの少年が急ぎ来たのは午後も深くなってからだった。
「十三番隊浮竹隊長の遣いの方がお見えです。白哉様とルキア様を酒宴のお誘いとのことで・・・」
「ほう、浮竹様の」
清家は顎鬚に手をやり考え込むが、すぐに目を伏せゆっくりと首を振った。
「白哉様もルキア様も現在外出されている。ご用件のみ承ってお返事は後ほどこちらから人を遣わせる旨お伝えせよ」
てっきり主人の外出先まで誰ぞ人を遣るものと思っていた少年は、一瞬だけ戸惑って返事が遅れる。その短い沈黙に被せるように、清家は言い添える。
「お二人とも、大事な方の処なのでな」
はい、と用利きの少年は頭を下げた。いつも厳格な清家がどこか優しい声音をしていたのが気にはなったが、理由は勿論訊かなかった。
少年が退室して足音が遠ざかった頃。清家は一息付くと筆を置き、障子を開けて縁側越しに外を見た。丁重に丹精された朽木家の庭は今年も春の花に溢れ、陽の光を透過して目に鮮やかだ。 巡り訪れたこの年、この春もまた美しい。
「・・・いい日和になりましたな」
ふと、同意を求めるような率直な想いが口を突く。 それは外出している主人とその妹御に対してなのか。それとも主人の、既に常世におらぬ大事な人に対してなのか。 清家自身も曖昧にしたまま、ただ快晴に恵まれた空を喜んだ。




『 春を懐ふ 』
  − We wish you happiness, our little sister. −




目を閉じていても陽光の温もりが目蓋の裏にまで届く。白哉はすゑと共に縁側に座り、瞑目していた。上空を遊び飛ぶ雲雀の囀りが二人の間にある沈黙を埋めている。
緋真がこの家を離れてからもう数十年もの月日が経つ。すゑは未だに壮健だった。孝太と幸枝は所帯を構えて独立したものの、まだ独りでも土を練り、細々と製陶の仕事を続けている。顔に手にと刻まれた皺は流石に深くなっていたが、背筋もしゃんとしており、凛とした眼差しも健在だった。
やがて、すっかり冷めた傍らの茶にようやくすゑは手を伸ばす。乾き強張った喉を湿すように口をつけてから漸く、重い口を開いた。
「あの子に関わる一連の騒動は春水から聞いた。あんたの立ち回りも含めてね」
すゑの声は穏やかだった。責める意図は窺えない。しかし白哉は身を固くすると改めてすゑに向きなおし、手をついて深深と頭を下げた。
「・・・詫びるべき言葉も見つからぬ有様です」
緋真の実妹、ルキアの極刑判決とその撤回に至るまでの事件についてだった。
結局は全て裏で糸を引いていた者がおり、ルキアの罪状自体がその人物の謀反の為にほぼでっち挙げられたものと判明したのだが。白哉は死神として、そして朽木家当主として、罪状が確定した際は妹への一切の温情を願うこともなく、そればかりか断固として刑の執行に拘ったという。
幸い、ルキアと親交のあった人間の少年と刀を交えて漸く白哉も考えを変え、最終的にはルキア救出の為に自身が深手を負うにも至った訳だが。
亡妻の大事な忘れ形見を、掟と誇りに拘り過ぎていたばかりに冤罪の果てで喪いかけたという事実は、消しようもなかった。
「頭を上げなさい。あたしに詫びる筋合いじゃないだろうさ」
「責めては下さらないのですか」
晴れて免罪となったルキアにこれまで隠し通してきた事実を全て話し、傷も快癒したが、白哉自身なおも己の愚挙に心を縛りつけられていた。頭を下げたまま、次の言葉すら出てこない。すゑは静かに首を振る。
「あたしはあんたの人生に責任を負える立場じゃないよ。それに昔、言ったことがあったろ・・・生きるために精一杯の奴ってのは、何が正しくて何が間違いなのか分かんなくなっちまうってさ」
かつて、緋真がまだこの家にいた頃にすゑが言ったことだった。流魂街での多くのならず者や、緋真のような重い過去を抱える者に接して人生を送ってきたすゑが語るその言葉の意味は重い。

敵わぬな、・・・本当に、この方には敵わぬ。
深い敬意を覚えて、白哉は頭を上げて膝を正した。やがて「言い訳にもなりませんが」と前置きして、言葉を選ぶ。
「永かったのです。緋真を喪ってからの五十年は・・・」
迷いながらも白哉は目を伏せ、ぽつり、ぽつりと心のうちを吐露した。
「五十年の間、私は、本当の意味で生きてはおりませんでした。掟のみをよすがに当主と隊長という責務に徹していた、ただの・・・半分死んだ男に過ぎません」
鉛のように重く漏れ出でる言葉が二人の間に沈殿していく。白哉の、それはまさに本音であり緋真を亡くしてから積もり積もった疵そのものでもあった。
「半分死んでいる、只の・・・卑小で無様な男です」
事実を辿るように口にするたび己の心からどくどくと出血していく。それでも、語らず逃げるのではなく、過ちを認め弱さを吐露することを選んだのがいかにもこの男らしい処だった。
ふう、と長い溜息がすゑから漏れる。白哉は視線を伏せ、唇を噛んだ。
「・・・馬鹿だねえ」というすゑの声に、見下げ果てられることを覚悟した。しかし、すゑから彼にかけられた言葉は意外なものだった。

「それでも、まだ、半分は生きてるだろう?」
意味を咀嚼するまでに思わず数秒を要した。驚きと共に白哉が頭を上げると、すゑはまるで子どもの悪戯に呆れ果てたかのように腕を組んで苦笑いしていた。
「昔とあんまり変わってないねえ、あんたは。色々と考えすぎなんだよ。もっと物事、単純に済ましちまえば良かったのさ。・・・ま、あんたのそういう処があの子には良かったのかもしれないけどさ」
ふふっと如何にも朗らかに笑ってみせてから、すゑは真顔になって白哉を見据えた。その眼差しはかつてと変わらず厳しく、そして優しい。
「・・・ずいぶん、遠回りをしたね」
「はい」
「そして、たくさんの人を傷つけた」
「・・・はい」
誇りと哀しみの縛鎖に囚われた挙句、何より大事にすべき義妹や彼女を大事に思う者達に刃さえ向けた。何という厭わしい愚かさか。
「・・・だけど、よく戻ってきた」
すゑの笑い皺は昔と比べて益々深い。同じように年月を刻んできた手がそっと白哉の肩に添えられた。
力は衰えすっかり薄くなったが、温かい掌だった。
「おかえり」
「・・・はい・・・」
抱えてきた哀しみも弱さも、狂気さえ孕んだ痛苦もいま漸くひと巡り。
ようやく行き着いた、いや、帰り着いたこの時この場所で、白哉は落涙しそうになるのを抑えて俯くのが精一杯だった。目蓋に掛かる春の日差しは相変わらず温かい。何処かで緋真が静かに微笑んでいるような気がした。あの頃のように、少し困ったような優しい笑みで。
春が訪れた。いまやっと、この男の心に春の光が再び届いていた。


 ●


やがて。
互い噛み締めるような穏やかな沈黙を破り、気配を感じた白哉が生垣の向こう側を見た。
「来たかい」
「そのようです」
二人の視線の先、通りの向こうからやがて、小さな足音と共に、人影が近づいてきた。目的となる家を探すように戸惑いがちだった歩みは、すゑの庭で咲き誇る躑躅を認めるとすぐに確かなものとなる。
「ご免下さい。あの・・・どなたかおられますか?」
玄関へと続く敷石を踏みながら入ってきた小柄な少女。すゑはその姿を見、内心驚きを隠せずにいた。
よく似ているとは聞いていた。実の姉妹にしても、瓜二つであると。実際に目にすると、その面差しといい、線の細さといい、本当によく似ている。
一瞬、緋真が居た頃がそのまま今この場で再現されたような錯覚にさえ陥る。すゑはそんな幻視を振り切るように、「ここだよ、よく来たね」と彼女に声を掛けた。
はっとこちらを向いた紫紺の大きな瞳が、縁側に座る人影が二人であることに気付いて更に大きく見開かれる。
「・・・来たな」
「白哉兄様!?」
今日ここに来るように言われていただけで、当の義兄本人が来訪しているとは知らなかったルキアは驚いた。しかしまずは、気を取り直してすゑに向かって深深と頭を下げる。
「すゑ殿でいらっしゃいますか。・・・初めまして、朽木ルキアと申します」
「ルキア、か。いい名だ」
勿論、見つかった緋真の妹の名前をすゑは予め聞いてはいた。とはいえ、本人のきちんとした挨拶と共に名乗られたその名前は、如何にも彼女に相応しい名のような気がしていた。緊張に体を硬くするルキアに、すゑはさあさあと促す。
「さ、挨拶はあとだ。汚い家だが入んなさい。まずは『会って』やっておくれ」


線香の香りが鼻腔を撫ぜる。長い瞑目の後、ルキアはゆっくりと目蓋を開き、合わせた掌を解いた。
目の前にある小さな仏壇、そこにあるすゑの夫らしき位牌と掌に乗るばかりの小さな骨壷が目に入る。壷は古びた布で丁寧に包まれていた。生成りの素朴な布だが、あしらわれた牡丹の刺繍糸の緋が鮮やかに目に残る。
座布団を降り、すゑに向かって丁重に頭を下げたルキアは、しばしの間、姉の遺骨が納められた壷を見詰めていた。その横顔に、目に、さまざまな複雑な思いが去来していくのを白哉は見て取ったが、やはり黙したままで姉妹の再会を見届けていた。
しばしの沈黙の後、ルキアはぽつりと呟いた。
「緋真姉様を・・・この御宅にも遺されていたのですね」
「ごく内密のまま分骨をした。知るのは清家のみだ」
緋真の墓は朽木家の墓所に当主の妻として相応しい場を与えられており、無論、遺骨もそこに納められている。しかし、緋真の遺体が荼毘に付された際、密かにすゑの為に一部が分けられていたのだった。
当時悲しみに暮れ果てていた白哉に代わり、その指示を出して実行したのは、清家だったという。
「そうでしたか・・・」
白哉の説明を聞き、納得したようにルキアは頷く。正式の墓所にはもちろん幾度も参ってきたが、この小さな家に納められた緋真のほうがより身近に感じられて、ルキアは改めて遺骨に手を合わせる。すゑも白哉も、黙ってそれを見守っていた。


すゑが茶を用意して、改めての挨拶、そして緋真の思い出話となった。
ルキアは今日この家に来る前に、白哉からすゑの存在、そして緋真との関係についてある程度教えられていた。当時衰弱しきった緋真を引き取り、共に生活して妹を探す手助けをし、やがて貴族との養子縁組の手はずを整えた姉の恩人、そして大事な『家族』であると。
加えて彼女と京楽家との繋がりについても。大貴族の血筋であるということから、いかに市井に自ら望んで身を窶したとはいえ、厳格で頑固そうな人物像をルキアは思い描いていた。
しかし、実際にこうして会って面と向かってみた女性は、予想を越えて『普通の』、そして親しみ易い『おばあちゃん』だった。
働き者の荒れた手で淹れてくれた茶は滋養のある山野草を煎じたものだろう。とても温かに喉に沁みる。さばさばと快活な笑い声がルキアの緊張を解かしていった。
「・・・緋真姉様には・・・姉には、すゑ殿のような方が傍にいて下さったのですね」
「そんな大層なもんじゃないよ。実際、随分と仕事もやって貰ったしねえ」
すゑは首を振ったが、ルキアは穏やかに、そして安堵したように微笑んだ。
「言い方は少しおかしいかもしれませんが、その、・・・安心、しました。姉が、私の件で心を責め続けるだけでなく、心穏やかに過ごせる場があったのだと分かって」
本来であれば、赤子の自分を棄てたことに対して憎んでもおかしくはない。そこまでいかずとも恨み言の一つや二つはあろう処を、己の心よりも緋真の心痛の方をそうやって澄んだ目で気にしてしまう。
ああ、やっぱりあんたの妹だねえ。すゑは心密かに呟いた。
「私が育った地区は偶々治安の悪い地区でしたが、犬吊の中でも住みよい場所があるのですね。先程も、道すがら人に親切にして頂きました」
ルキアがこの家に至る途中で道に迷い、若夫婦に丁寧に道を教わったと言うと、すゑは一瞬妙な顔をした後に笑った。
「そうか、そうかい。そりゃうちの知り合いというか、まあ・・・あんたが次来た時にでも呼び出してちゃんと紹介しなきゃねえ」
などと楽しげに計画するすゑに白哉も微笑んでいた。
緋真がこの家を出る際、すゑ自身が『自分の悪評が影響しないようにと』願ったために殆どの関りを断ち切らざるを得ず、白哉自身、この家に来たのは緋真の分骨をした時以来だ。
あれから数十年を経た現在ではすゑに関する流言もほぼ絶ち消えて久しく、最早、懸念すべき事などない。今こうして、すゑとルキアが楽しげに言葉を交わす様子を見ていると、やはり会わせて良かったのだと白哉には思えた。

実の姉を名乗る資格などない、故に妹が見つかっても真実を伏せていて欲しい・・・妻が願った約束は、この手によって違えてしまったが。心の中で詫びつつも、二人の邂逅の様子を見れば緋真も赦してくれるのではないかという気がしていた。


 ●


ひとしきりの話の後、すゑが茶を淹れ直すために中座して戻ると、ルキアは庭で植えられたものを一つ一つ眺めていた。
猫の額にもならない庭だよというすゑの言葉に、「緋真姉様がご覧になっていたであろう場所を私も見たいのです」とルキアは微笑んで許しを得、散策を続けた。

「やっぱり、似てるね。外見だけじゃなくて・・・緋真もああして、庭に植えたものを眺めているのが好きだった」
すゑはそう呟いて茶を啜る。黄昏になりかけた光が橙色を帯びて降り注いでいた。白哉も傍らで座しながら、ただ耳を傾ける。
「この歳になってさ、・・・思うようになった。あたしも随分長い間生きてきて、緋真は短い生涯を生ききって、・・・あんたや、ルキアは、まだまだこれから生きていく。これまで色々なことが・・・本当に色々なことがあったけれども。良いことも悪いことも、本当はそんなに価値なんかないんだ」

細められた目は庭に立つ小さな背中を眺めているようであり、過去の風景を中空に求めているようでもあった。長い生から抽出されたすゑの言葉は、半分は白哉に、半分はすゑ自身に向けられて、滔々と続いた。
「時間の流れの中で生きるモンは生きて死ぬモンは死ぬ。本質ってのは事実ただそれだけで、過程にある云々は、・・・なんてことはないんだよ。たださ、意味も価値もそんなにない一個人の人生の中でさ。・・・せめて、周りの者を少しでも笑わしてやれたなら、そしたら、・・・ちょっとはいい人生って言えるんじゃないかって。ようやく、そう思えるようになった」
ふっとすゑは笑う。去来するのはかつて出会い別れた様々な人の記憶。
まろい優しいものばかりではない。今なお棘尖り続けるものもあるが、それはまたそれ。こんなにも穏やかな春の夕刻の中では、それすらも愛おしい。白哉にとっても同じだった。

「そうですね。本当に・・・そうです」
はい、と噛み締めるように頷く。すゑは白哉に向かいなおし、「だから緋真は、いい人生だったんだと思うよ」と微笑んだ。
「あんたを笑わせてやれた。そして、あんたがあの子を、・・・ルキアを笑わせてやる道筋を作れた」
視線をやると、熱心に庭木を見ているルキアの小さな背中からはその表情が見えない。しかし、実に楽しげな足取りだった。様子を見ていたすゑは小さく頷くと、ぽんと白哉の肩を叩いた。
「家族として、兄として、ちゃんと幸せにしてやんなさい。大丈夫。あんたなら、・・・大丈夫だよ」
「・・・はい」

白哉の迷いは、ほんの一瞬のみだった。去来したのはついこの間の、妹を死刑台に送り出そうとした自分の愚かしさ。それを断ち切るように席を立ち、草履を履く。ルキアはちょうど薄桃色の躑躅の花に手を伸ばし、一輪だけ手折って、その根元を口に含んだところだった。

「・・・・・・」

白哉は黙したままで、同じく躑躅に手を伸ばした。義兄が近くに来ていたことに驚いたルキアは花を口にしたまま驚くが、彼が自邸の庭でそうするように、そして自分と同じように躑躅の蜜を味わうのを見、嬉しそうに微笑んだ。
「白哉兄様、あの・・・かねてよりお訊きしたいことがございました」
こくんと口内に僅かに広がる甘味を飲み込んで、ルキアは少し緊張しながら訊ねる。
「兄様は何故、躑躅の蜜を吸われるのですか? あのっ、その・・・以前甘いものはお嫌いと伺っていたもので、不思議に思いまして、ただその」
自分の問いに花から口を離した白哉がじっと自分を見ているためか、ルキアは緊張を覚えてしどろもどろに質問を続ける。そんな様子の義妹を見下ろし、珍しいことにふっと白哉は微笑む。縁側では、すゑが同じようにどこか満ち足りた笑みをしながら二人を見守っていた。
「ああ、・・・躑躅の話をしよう。お前の姉・・・私の妻についての」

あの頃と少しも変わらずに花は咲き、鳥が飛ぶ。
そんな当たり前のことがいま彼の心には暖かく思われ、白哉は空の明るさに目を細めた。視界に捉えてともすれば、滲んでぼやけてしまいそうになる明るい光を。

「長く、・・・懐かしい話だ・・・」

そして、かつて同じような光の中で、自分の隣を歩いていた緋真のことを想う。共に生きていくと決め、互いの手を離さぬようにと握り続けた掌の温かさを。そして、交わした言葉を。
『緋真はずっとお傍におります』
・・・心を支えてくれる、あの声を。


だから今もなお。あの春を想う


お前と歩んだ、春を、――――― 懐う。




 『春を懐ふ』    【完】










ここまで読んで下さってありがとうございました!
語り終えたことに更にあれこれ加えるのは書き手として下の下かもしれませんが、ずいぶん長い時間彼らと向き合ってきたので、各人に対する私個人の思い入れなどを。

◇ 白哉について
原作本編よりも若い設定なので色々冒険させてみました。誤解から緋真を探して花街を歩くあたりが最高潮な若造っぷり(・・・)。
なにせあの兄様ですからとっぴな行動は控えるように・・・と心がけたつもりが、結構とっぴな事ばかりさせてしまいました。反省。
本編では主題がずれるので入れなかった『ルキア救出編』での彼の言動は、最後はすゑ婆ちゃんに温かく叱ってもらいました。

彼はまだまだこれからのひと。大切な人を亡くしても、その人と出会い過ごした日々は、必ず彼に寄り添い続けてくれる。それが今回のお話の大事なテーマのひとつでした。


◇ 緋真について
原作であまり出番がないので、性格等はかなり独自設定色が強くなりました。優しく芯が強いのだけれど、過去のせいでいつも苦しんでいるひと。擬似家族ととりあえず生き延びている・・・という環境自体は捨てられたルキアを思うと随分温かいものに見えるかもしれませんが、実際内面では常に苛烈な葛藤と戦い続けることになると思います。
このために、本編の中盤は夜鷹疑惑が恋の障害になっていたのを、後半は緋真の心それ自体を一番の壁にさせました。最終的には壁を千本桜で打ち壊させたみたいになったな・・・当主様、力技です。でもこれ位しないと進展しそうにない印象があります、この二人。

人が人に恋をするという本質を、彼女がいなければ白哉はわからないまま生涯を終えていたのではないでしょうか。そういった意味でも、彼にとってかけがえの無い、ただ一人の『永遠の人』。
これからも旦那様や妹さんを見守っていてください。


◇ すゑ婆ちゃんについて
オリジナルキャラ。緋真がどうやって流魂街で生き残っていたのか・・・ということを考察したときに、協力者の存在が欲しいと思い作ったキャラでした。あと、二人の大事な橋渡し役。
緋真に対する考えのスタンスは書き手・読み手側の視点を代弁してもらうつもりでいましたが、実際に書き始めるとその目論見から独り立ちするようにキャラが立ち、緋真の理解者としての立ち位置が強くなりました。京楽家とのかかわりはかなり初期から設定していた部分。
白哉がこの人に対して丁重なのは、彼女の捨てた高貴さを感じて・・・というよりは単に年配者に対して礼節を重んじた上、婆ちゃん個人に敬意を表していたため。(基本、年配者に対する礼儀は徹底してると思うんだ兄様)
後半は、白哉が無意識に求めた母性も引き受けてくれました。いまも亡き旦那さんとの窯を守っています・・・ということで。


◇ 清家さんについて
原作でも出てくる御仁ではあるものの出番が少ないため、性格設定等についてはほぼオリジナルで創作しました。
憎まれ役がほとんどでかなりきついことを言ってますが、それは朽木家を大事に思っているからこそ。作中では白哉と対立しているところばかりになってしまったものの、彼がもっとも信頼をおく人物だ思います。
公式小説版でルキアにアドバイスしてくれてたのが無性に嬉しかった・・・!


◇ 六番隊副隊長について
オリジナルキャラ。当初は白哉が職場で流魂街出身者とうまくやっていけない・・・という点を強調するために作ったキャラでした。最終的に白哉の背を押す事になる等、想定以上の動かし方ができたかな、と思います。初登場時にはこれっきりの出番と考えていたので、名前がなかったんですよ。 流魂街に戻った彼は、能力のある子どもに死神になる勉強を教えた・・・というのが良いな。


◇ 伝輔さんについて
オリジナルキャラ。花街で緋真の妹探しを手伝う役回りでした。流魂街の設定からして、この人と同じ境遇(妻と生き別れ)になった人ってかなりの数がいるのではないでしょうか。
幇間の台詞書くのが楽しいけど難しかった・・・(苦笑)。


◇ 孝太・幸枝について
オリジナルキャラ。この連載、孝太の粗相がなければ始まらなかったというある意味最重要キャラ(笑)。
本編には盛り込みませんでしたが、緋真を『おねえちゃん』と呼べないことについての理由はうすうす感づいてるみたいです。だから緋真が幸せになるのに非常に協力的。
最終的にはすゑの救済という役回りも担いました。ルキアとの邂逅はかなり後になってから作ったエピソード。幕間のなかでは一番気に入ってます。打ち解けたらとても仲良くなりそう。


◇ さいごに
本編はすべて『白哉と緋真が精神的に結ばれるまで』。
時間軸が現在で進む幕間と最終章は『白哉と緋真が願い続けてきた“妹”の笑顔』。
語り足りなかったり蛇足があったりと未熟な出来ではありましたが、なんとかいずれの主題もひとまず綴り終えたことが出来たように思っています。
ここまでお付き合い下さった方、本当にありがとうございました。

最後にひとこと!
朽木夫妻 フ ォ ー エ ヴ ァ ー !!

ありがとうございました!
また、どこかで!

平成23年1月6日 マッグパイ


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