「副隊長と仲良くする秘訣を教えてくれ」
「「 ・・・・・・ は い ? 」」
某日。五番隊隊舎。
二番隊隊長にして隠密機動総司令官・砕蜂が、いきなりそう言って乗り込んできたのを見て。
五番隊隊長・藍染惣右介と副隊長・雛森桃は思わず顔を見合わせた。
『 教えてプリーズ☆ 』
− May I ask a question ? −
「・・・つまり、砕蜂隊長は、」
「二番隊さんの仕事の効率を少しでも向上させようと、」
「副隊長の大前田君と少しでも歩み寄りを図ろうかと、」
「そうお考えになって、」
「うちの隊に聞きに来た訳なんだね?」
「うむ」
人にものを尋ねに来た割には、どこか偉そうに胸を張る砕蜂だったが、藍染と雛森は彼女の意図を理解して妙に納得した。
泣く子も黙る刑軍の軍団長まで務めるこの小柄な女性が、まるで何かを吹っ切るがごとく仕事熱心なのは、有名な話で。
彼女がその真面目さゆえに、副隊長との間柄まで気にしだすというのは、まあ、ありそうな話だ。
他の隊に相談に来るまでとなると、相当思いつめたのだろう。多分この人はこの人で、照れているのだ。
「で、どうしてうちの隊に来たんだい?」
「うむ・・・隊長が女で副隊長が男の隊は二番隊だけだが、とりあえず、他の隊で隊長と副隊長の性別が異なるところに尋ねてみようかと思ったのだ」
「なるほど・・・そういうことでしたら、あたし達もささやかながらご協力します、ね、隊長!」
「そうだね、力になるよ」
・・・・・・と、いう訳で。
●五番隊に聞きました 『二人が仲良くする秘訣を教えてください☆』●
「そうだねえ・・・立場にとらわれず、同じ目線で話をすること、かな?」
「あたしや隊員にとっては畏れ多いですが、席官・平隊員にかかわらず意見をくみ上げてくださるので、とてもありがたいです」
「役職の違いのせいで意見の多様性が損なわれるのは、勿体無いからね」
「でも、藍染隊長はもっと威厳を出されてもいいと思いますよ」
「偉ぶるの嫌いというか・・・そもそも苦手なんだよ、僕。ま、こうして副隊長さんも臆せず苦言を呈してくれることだし、威厳ない隊長で良かったと思うよ」
「もう! また、そんな事言って!」
「はは、ごめんごめん・・・って、あれ、砕蜂君、もう行くのかい?」
「いや、すまん、時間をとらせた」
(つまり、
友達のように接する
ということか・・・)
頷きながら、砕蜂は五番隊隊舎を後にした。
●十番隊にも聞きました 『二人が仲良くする秘訣を教えてください☆』●
「言いたいことを言いたいように言い合う、でしょうかね?」
「お前は何でも思った事を言い過ぎだ」
「隊長だって口に堰を立てた方がいいですよ。この間だって人の服装にぎゃーぎゃーと!」
「公序良俗ってもんを考えろって言っただけだろうが!」(←ひでえ)
「支給される死覇装のサイズが小さすぎるんです! あたしのせいじゃありません!」
「標準サイズの死覇装に比べて、お前がでかすぎんだよ!」
「でかいののどこが悪いんです! 好きでこうなった訳じゃないわ!」
「1日に牛乳3リットルも飲むからそんな標準離れしたバカでかさになるんだろ!」
「バカでかいのが羨ましいなら、隊長も少しは見習って更に牛乳飲んだらどうですか!」
「もう充分飲んでる! 朝昼晩おやつに加えてコーヒーにもタップリと・・・っておい、砕蜂、もういいのか?」
「いや・・・すまん、迷惑をかけた」
(つまり、
姉弟のように接する
ということか・・・)
頭を掻きながら、砕蜂は十番隊隊舎を後にした。
●十一番隊にも聞いてみました 『二人が仲良くする秘訣を教えてください☆』●
「秘訣っていっても・・・仲いいのが普通、みたいなもんだよねー。ね、剣ちゃん!」
「仲いいっていうかまあ・・・懐かれて以来、喧嘩しても結局もとの鞘におさまるし・・・そういう意味ではもう、腐れ縁だな。好むと好まざるとに係わらず。こればっかりは俺でも斬れねえや」
「あたしはものごころついた時から剣ちゃんといたんだもん。剣ちゃんといっしょにいないあたしなんて全然想像もつかないよ。そしてこれからもずっとず- っと一緒にいるの!」
「・・・多分俺は、こいつをずっと見守る羽目になるんだろうな。責任ていうかなんていうかそういう。やちるお前、早くでかくなって嫁に行っちまえよ」
「や−だーよっ! あたしは剣ちゃんのお嫁さんになるんだもん! だからそれまで待っててくれなきゃ駄目よ? ホカノオンナなんかに目移りしたら許さないんだから!」
「・・・あのな。お前はどこからそんな言葉覚えて・・・って、砕蜂、行っちまうのか? ひとつ斬り合いぐらいして行けや」
「・・・いや・・・すまん・・・邪魔をした」
(つまり、
親子のように接する
ということか・・・)
首をかしげながら、砕蜂は十一番隊隊舎を後にした。
●八番隊にまで聞いてみました 『二人が仲良くする秘訣を教えてください☆』●
「そりゃあ勿論マメなアプローチと緻密なバディケーショ
ゲ フ ゥ ッ !!
」(←裏拳命中)
「拳で語り合う(但し一方的)ことでしょうか、このように」
「あぁん七緒ちゃん、そんなバイオレンスな君もス・テ・キ・・・」
「二発目がご入用ですか、京楽隊長? いらないと言ってるのに隊長が毎年私の誕生日に下さる指輪で、メリケンサック作ったんですよ。何なら試してみます?」
「すいませんもういいませんごめんなさい・・・愛してるから許して・・・」
「・・・コホン。まあ、仲良くとまではいきませんが、我が八番隊はこうしてかろうじてながらも均衡を保って・・・あら、もうよろしいのですか? 砕蜂隊長?」
「・・・いや・・・すまん・・・。・・・・・・馳走になった」
(
めをと漫才
・・・つまり、
夫婦のように接する
ということか・・・)
眉間にしわを寄せながら、砕蜂は八番隊隊舎を後にした。
「ねえ七緒ちゃん、砕蜂ちゃんにお茶とかお菓子、出してたっけ?」
「いえ、お出しする前に行ってしまわれました」
「ご『馳走』してないよねぇ。変な砕蜂ちゃん」
「はぁ・・・まぁ・・・(良かった・・・隊長が変なとこ鈍くて・・・)」
●
・・・・・・・・・そんな訳で。
頭を抱えながらも砕蜂は自隊・二番隊隊舎に戻ってきた。
(とりあえず各隊の現状を見聞してきた訳だが・・・ううむ、同じように大前田と自分との関係を再構築するのは、なかなか難しいかも知れぬな・・・。・・・いや、ここで諦めるな砕蜂! 最初から諦めていてはいかん! まずは出来るところからやってみようではないか! そうまずは、とりあえず笑いかけるところから初めて、行く行くは円滑な信頼関係を・・・!)
とりあえず前向きに検討してみることにして、砕蜂は執務室のふすまを開けた。
ガ ラ ッ
そこには。
山積みの書類を前に仕事をサボり、袋菓子を頬張りながらスポーツ新聞(←東○ポ)を読んでいる大前田が。
「
ふもっ!? んももふんんっ!!
(た、隊長!? お早いお帰りで!!)」
砕蜂の握りこぶしが、ぶるぶると震える。
・・・こいつと。
友達
になったり、
姉弟
になったり、
親子
になったり、
あまつさえ、
夫婦
になったり。
・・・だと?
・・・・・・・・・・・・プツリ。(←何かが切れた)
「
貴 様 な ん ぞ と そ ん な こ と が で き る か ぁ ぁ ぁ ぁ !!!
」(ガターン)
「うわっイテッ隊長! ちゃぶ台ひっくり返さないで下さいよ! あぁあ抜刀しちゃダメー! アンタ刀抜くとハゲ忍者が沸いてくるからー! だからそこで羽織脱がないー! この間瞬閧の練習とか言って隊舎壊したばかりでしょうが!!
だ、誰か来てくれ、
砕 蜂 隊 長 ご 乱 心 ー !!
」
●
その後。
ぷりぷりと怒る砕蜂と、包帯を巻きつつその後をついていく大前田の姿が見られたそうな。
それを見るたびに人々は、
「喧嘩するほど仲がいいって言うもんな。二番隊は安泰だなぁ」
と、呑気な感想を言い合ったそうな・・・。
Fin.
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