※腹黒い(?)織姫なんてありえん! という方にはオススメできません。



『 裸の包丁を持つ女 』
  − THE BITTER DISH RHAPSODY −



  ・・・ありがとう 黒崎くん  助けに来てくれて

  だけどあたしは ここでやるべきことを見つけたの・・・


  それは きっと

  あたしにしか できないこと――――


  ●


ここは虚圏・夜虚城(ラス・ノーチェス)。

現世から井上織姫を捕らえた破面たちは、来るべき計画実行の日に向けて着々と準備を進めていた。

現世から数名の人間と死神が侵入しているらしいが、各所で予定通り交戦中。予定では間もなく制圧できるはずだ。

自分の計画が予定通りに進んでいることに『 天に立って欲しい男NO.1 』(※虚圏通信11月号読者アンケート調べ)藍染惣右介はご機嫌でただっぴろい場内を歩いていた。

付き従って歩くロリ・メノリの破面少女二人組も、藍染の傍にいられることが嬉しくて仕方ないという様子だ。

「藍染様、今日の午後のお茶は現世から特別なダージリンを取り寄せました。私が美味しくお淹れ致しますね!」

「いいえ藍染様、ロリなんかに任せたら折角の紅茶が穢れます、是非このメノリにお茶汲みを!」

「なんですって!? アンタなんかに任せたら苦くて飲めたもんじゃないわよ、この味音痴!」

「はあ!? 茶葉ケチって水みたいなうっす〜い紅茶入れるケチ女に言われたかないわよ!」

「まあまあ、ロリもメノリも落ち着きたまえ。濃いのと薄いのがあるのなら・・・二人で淹れたものを混ぜれば丁度いいんじゃないかな?」

「「さすが藍染様、名案です・・・!(ほろり)」」(←いや、絶対マズいって、それ)

部下同士の争いの解決も余裕しゃくしゃく☆な藍染がますますとくいげに歩いていたところ・・・

「あーっ、藍染様、ここにいたんですか!」

廊下の向こうから、先日捕らえた井上織姫がニューコスチュームに身を包んで走りよってきた。お目付け役であるウルキオラも一緒だ。

「やあ、織姫。どうしたんだ? ウルキオラもいるという事は・・・部屋から抜け出したというワケではないようだが」

「はい! 無理言って連れてきてもらっちゃいました!」

仮にも同胞として忠誠を誓わせたとはいえ・・・余りにニコニコと攫われた自覚ナシで織姫は笑っている。

藍染は彼女の心理をはかりかねたが、ここ部下らの手前、いぶかしむ様子もなく余裕の表情は崩さなかった。

「申し訳ありません、この女がどうしても藍染様への忠誠心を行動で示さねば自分の気が済まないと申しまして・・・」

「いやいいんだよ、ウルキオラ。彼女が我らの同胞として動いてくれるのならこんなに喜ばしい事はない」

「ですが藍染様、この女は単なる人間です・・・!」

「もしや、一時的に我らの仲間になったように見せかけて何か企んでいるのかも・・・!」

「頭から疑ってかかるのは良くないよ、二人とも」

気色ばむロリ・メノリの両名を諭すように、藍染はにっこりと笑ってみせた。(技名:惣右介スマイル)

「せめて何をしてくれるのか聞いてからでも遅くないじゃないか。織姫、私への忠誠心を示すというが・・・具体的に、何をしてくれるんだい?」

「はい、藍染様にぜひあたしの手料理を食べて頂こうかと!

「「「・・・・・・・・・はい?」」」

ロリとメノリは胡散臭い顔のまま、藍染は余裕スマイルをはりつけたまま、得意げな織姫の前で固まった。


  ●


  フンフフ♪ フフフフ♪ ンッフンフン♪ (←※笑点のテーマ)


ただっ広い食堂の向こう、奥の厨房から謎の鼻歌が流れてくる。

時折、それに混じってジュワーだのゴポゴポだの、たまに ギュイイイィン ありえない音が混じっているが、待つ藍染は努めて不安を隠し通し微笑んでいた。

「ちょっとウルキオラ・・・あの女、なんかスゴい音立ててるみたいなんだけど・・・しかも、とんでもない悪臭までするじゃないの(汗)」

「喚くなメノリ。ちょっと大掛かりな装置を使って手の込んだ料理を用意しているだけだ」

「手の込んだ・・・って。・・・ふ、ふふ、随分と頑張って作ってくれているようだね?」(←でも声がうわずる藍染様)

「ええ、現世から特別に食材を取り寄せたとかで・・・ロリ、お前が買い出しに行った筈だな?」

「あの任務ってあの特盛り女の為だったの!? あたし、現世の店でカメラ野郎にストーカーされて苦労したんだから・・・!」(←コスプレ風ミニスカ+肌露出が原因)

「・・・ちなみに、何を買ってきたんだい?」

「ええと、確か・・・ネギと・・・バターと・・・」

「ネギと、バター? ・・・炒め物でもするのかしら、あの女」

「虚夜城の材料とそれを併せても、毒になる可能性は無いな・・・。少なくともこの私を殺せるようなものにはならないよ。ロリ、他に買ってきたものは?」

「他に・・・バナナとようかん・・・でした、確か」

「「「 ・・・・・・・・・(・・・な、なにを作る気だろう・・・?) 」」」

なんとな〜く一同がイヤな予感に包まれた時、


ぐえっふぉ! げほ、げっ、み、水、水ーーっ!!


厨房の方から、グリムジョーの魂のシャウトが響いてきた・・・。

『 あーっグリムさん、つまみ食いしちゃダメですよ! 』
『 ダメですじゃねえよ! ハラ減ってとりあえずつまんでみたら、なんだこのありえねぇ味はーっ!!
『 ええ!? そんなハズは・・・もぐもぐ、うん、ちゃんといつも通りの味じゃない、グリムさんの舌がおかしいんですよ、セクスタだから
セクスタ関係ねぇよ! いや俺の味覚は正常だ、この料理の味はありえねぇ。ってか俺がこの料理を拒絶してぇわ!!


「・・・藍染様・・・(汗)」

「・・・やっぱりお止めになった方がよろしいのでは・・・?(汗)」

「・・・・・・・・・(脂汗)」

ロリとメノリの不安そ〜な顔に、藍染も「うん、やっぱり今回は遠慮しておこうかな・・・」と辞退しようとしたところ、

「・・・甘いぞ、ロリ、メノリ」

ウルキオラだけがポーカーフェイスを崩さず、堂々と言った。

「貴様らの前にいらっしゃるのは誰だと思う・・・超然たる英知と能力で我らを導いて下さる藍染様だ。その藍染様が、グリムジョーごときが屈した料理を食せないと思うか?」

「いや私だって別に味覚は超人じゃないんだから食えな」
「・・・(ハッ)そうよねウルキオラ、その通り! 藍染様をグリムジョーごときと同列に考えるだなんてあたしが間違ってた!」
「そうよね、藍染様ならあんな女ごときの料理、きっといくらでも食べられるわ! グリムジョーごときと違って!」

『 こらテメェら、食堂にいる奴! ここぞとばかりに俺ごときとか勝手なこと言ってんじゃねえー!!
 (←けっこう地獄耳グリムジョー)

(不幸なグリム君の主張は無視)「・・・そういう事だ、ロリ、メノリ。藍染様に仕える以上、その素晴らしき身体能力(←消化能力?)に疑いを持ってどうする」

「いやあのウルキオラ、私の能力を尊敬してくれるのはありがたいんだか、ちょっとおかしな方向に買い被りが過ぎやしないかい?(汗)」

「いいえ藍染様、買い被りだなんて! ロリは貴方様をどこまでも信じております!(キラキラ)」

「ずるいぞロリ! 藍染様、メノリも信じております、きっとあの女が作ったいかなる料理でもフードファイターの如く完食して下さると!(キラキラ)」

「え・・・あの・・・ちょっ・・・君らね・・・(脂汗)」

キランキランと目を輝かせている部下達に、藍染ご自慢のスマイルにダラダラと汗が流れはじめた。

(ヤバい・・・なんとかしてこの状況から脱しないと・・・)

そう藍染が織姫拉致の際に考えた「心理の檻」も真っ青の真剣さでどうにかして織姫の料理から逃げる方法を考えていると・・・

「おっまたせしました藍染様〜! さ、どうぞ召し上がってください、あたしの忠誠の証です♥」

料理を終えたらしい織姫が、得体の知れないどんぶりを満面の笑顔で差し出した・・・。

「(う”・・・っ)」

どんぶりの中身はラーメンらしい。が、匂いは明らかに麺類じゃない。なぜか甘い香り・・・そしてほのかに、鼻の奥にピリッとくる芳香がする。

しかも、上の具が問題だ。本来あるべきナルト、シナチク、ゆで卵、チャーシューの類は一切なく、なぜか立派なたいやきが一匹鎮座ましましているのだ。

「一応訊いておこうか織姫、こ・・・これは・・・ラーメン・・・なのかな?(汗)」

「ええ、ご覧の通りのラーメンです! 乱菊さんにも好評だったんですよ」

「乱菊って・・・(あの悪食の)松本君に!?」

「ええ! ですから藍染様にもお気に召したら嬉しいです、あたしの得意料理『 ハチミツとわさび入りタイヤキラーメン 』!」

「いや、ネギとバターとバナナとようかんはどうしたの!?

「流石は藍染様に神の領域を侵すと云われただけはある・・・。材料の性質まで変容させるとは、やるな、女(ごくり)」

「いやいやいや、納得してる場合じゃなくてウルキオラ、確かに私はそう言ったがこれは別の次元を侵しているっていうか(汗)」

「あの材料でラーメン作るだなんて・・・。現象の拒絶、まさかここまで成し遂げてしまうとは・・・(ごくり)」

「藍染様に目をかけられるだけはあるのかも知れない・・・悔しいけど、今回はこの女に負けたわ・・・(ごくり)」

「だからロリとメノリも感心している場合じゃなくって!(泣)」

「さ、藍染様・・・のびてしまうと美味しくなくなっちゃいますから、どうぞお早く!(ずいっ)」

「グリムジョーごときに負けぬ豪快な食べっぷりを我らに見せて下さい、藍染様(ずいっ)」

「鋭い洞察力で毒ではないと先ほど仰ってましたよね!(ずいっ)」

「あの女が作った料理なんか、易々と消化して下さいますよね、藍染様っ!(ずいっ)」

「あ・・・う・・・、すいませんごめんなさい調子に乗った私が悪かったからこの寄食チャレンジだけはカンベンしてください・・・ッ!!!」(←天に立ちたい男、半泣き)


 ●


・・・こうして、織姫の密かな計画は実を結び、いっけん完璧に見えた親玉・藍染惣右介の心に消し難いトラウマを植えつけるのに成功した・・・。
(副次的利益:グリムジョーのトラウマ)

この弱点の発見こそが、後に一護ら救出部隊が藍染を追い詰める一因になった・・・かどうかは、定かではない。



・・・教訓。悪人やるのも楽じゃない。


   Fin.


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