『 魅惑の小箱 』
− secret of the jade box −
夜も更けた瀞霊廷、ただっ広い朽木邸。
その一室で、朽木(白)と朽木(ル)の義理兄妹はさし向かいで正座していた。
雰囲気はなにやらモノモノしい。
白哉の妻であった緋真とルキアの関係が明らかになり、二人の間に聳えていた氷山が溶けかけたとはいえ、でかい氷山はやはり
でかい氷山。
ちょっとやそっとでは万年氷は溶けやせず、ルキアは緊張して頭を下げた。
「それでは兄様・・・私は明日より先遣隊として現世に参ります。末席ながら粉骨砕身の覚悟を以って、藍染の野望を打ち砕く所存にございます」
「うむ。この朽木家の一員として、なにより一死神として、立派に職務を全うするが良い」
「はいっ!」
「・・・とはいえ、奴らも崩玉によって底知れぬ力を得ておるかも知れん。・・・あまり、無理はするな、ルキア」
「は、はいっ! 御心遣いありがとうございます、兄様!」
・・・このへんが氷山が溶けた部分かしら、とルキアが感動しながら頭を上げると、白哉は何やらガサゴソと袂をまさぐった。
「さて・・・お前にはこれを返しておく」
あらわれたのは、ルキアには見覚えのあるリュックだった。(←どうやって狭い袂に入っていたのか、ルキアはツッコまない)(兄様相手だから)
「これは・・・」
「現世にてお前を捕縛した際刑軍に渡していたものだが、執行の中止とお前の解放に伴い、返却されたのだ」
「よかった・・・っ。このリュックサック、お気に入りだったのです」
「(りゅっくさっく・・・? この荷物入れの名称か?)・・・さて。ひとつ聞きたいことがある」
「な、何でしょうか?」
緊張を含んだ白哉の声音にルキアは背筋を伸ばした。
「(まさか高校に潜伏していた時の古文のテスト答案(←28点)が見つかっただろうか・・・? い、いや、千鶴とかいうクラスメエトに無理矢理押し付けられた
謎の物体が
兄様の怒りを誘ったのであろうか・・・?)(ドキドキドキドキ)」(←なにを押し付けたのか万年発情女子高生・・・)
ルキアが色々な心配に体を堅くしていると、白哉はふたたび袂をゴソゴソして、やはり袂の容積とはかけ離れたある物体をとり出した。
「・・・この、『翡翠のヱルミタアヂュ【1】〜【5】』なる書籍はなんなのだ? やけに挿絵が多い・・・というか、挿絵が主な本のようだが」
・・・当主様が取り出したのは、SYU英社刊行の少女漫画のコミックスだった。
「あ、それは漫画といいまして、現世の文化を知るために私が浦原商店の娘(=雨)から借りていたのです」
「ほう、現世の文化か・・・。巧みに人間に同化し生活するためのお前の向上心、感心に値する」
「おそれ入ります」
てっきり『赤点の答案』『千鶴に押し付けられたイカガワシイもの』で怒られると思っていたルキアは、すっかり安心して白哉に手を差し出した。
白哉はその漫画本をルキアに手渡しかけて・・・その直前で、彼の手は止まった。
「・・・で、この巻の
続きはどうしたのだ?
」
「・・・
は?
」
一向に返される気配の無い本と、白哉の今の言葉が理解できずにルキアが間抜けな声を出すと、硬派で通っている六番隊長・朽木白哉は頬を赤らめて、わざとらしい咳をついた。
「ゴホン。こ・・・この巻の続きはないのかと聞いている」(←当主様、
読んでた
)
「つ、続きですか・・・!? いえ、それは最新刊を借り受けてきたのでまだ続きは刊行されておりません・・・そのため、実は生きていた母親がソフトマゾのフランソワに凶刃を向け、マリアンヌが集中治療室で復讐を誓うシーンの続きは、まだあと数ヶ月は読めません」
「・・・そうか・・・(←こころなしかションボリ)では病院の廊下に立っていた影の正体も、まだ分からぬのだな・・・(悔)」
「いえ、現世で潜入していた高校で雑誌を回し読みしていたのですが、どうやらあの影は落ち目の芸人がマリアンヌに目をつけていたようで、現金収入と母親を欺くという利益を考えたマリアンヌは
ハードゲイとして芸人に弟子入りを
」
「いや待て、言うなルキア!」
「(ビクッ)は、はい・・・」
「・・・いや、聞くまでもない・・・(フゥ・・・ッ)。・・・ルキアよ、私は朽木家当主としてお前に一つ、命を下そうと思う」
「命、といいますと・・・?」
ごくり。今までに無い義兄の緊張した面持ちに、ルキアは息をつめてこれから下される命令に聞き入った・・・。
●
「・・・で、ルキア・・・」
「・・・隊長のその命令を遂行するために、オメーはわざわざ本屋に予約入れてまでホラー漫画を買おうとしてるってのか・・・」
場所は現世。空座町の某書店店頭で、がっくりと脱力する(派手めな)男子高校生の姿があった。
無事に現世帰還を果たした一護と、現世に潜入中の恋次だった。
「な、何がおかしい! 白哉兄様が直々に私に命じてくださったことなのだぞ!」
呆れた顔の彼らに、これまた(派手めな)女子高生姿のルキアが食らいつく。
「つったってよぉ・・・、隊長はなんでまた、ホラー漫画に目覚めたんだか・・・」
「ホレ、あれだ恋次、いままで真面目一辺倒だったサラリーマンがふとしたきっかけで
ガンダマニアになるとかそういう・・・
」
「あー、なるほど、
遅咲きのオタクか
」
「何だと!? 兄様がオタクであるはずはない! いいか・・・この漫画には、れっきとした死神の仕事が隠されておるのだ!」
えっへん、と腕組むルキアだが、ツッコミ体質の一護と恋次は簡単に納得することはできない。
「「
・・・・・・死神の仕事、だぁ?
」」
「そうだ! 兄様は仰った。この漫画には、人間の振りをして現世に潜む破面が虚圏の一味に送る暗号が隠されているのだ!」
「「・・・・・・はい?」」
「例えばだな! マリアンヌが病室で復讐を誓うシーンこそは藍染が反乱を起こすタイミングを示し・・・こ、こら待て、貴様らどこへ行く!?」
「「・・・・・・・・・」」
「待てこらぁ!! 話を聞け! いいか、奴らの通信を監視し白哉兄様のもとへ送るのが私の使命・・・ま、待て一護、恋次ーー!!」
「「
・・・・・・・・・アホらし・・・・・・
」」
その後、本屋の一角で、ひとり謎の電波発言を繰り返していたルキアは客の好奇の目線にさらされ続けたという・・・。
●
その頃。
同じく本屋の一角・少年漫画コーナーでは・・・
「たーいちょう・・・。現世派遣の特別手当なんて雀の涙なんですから、ポ○モン漫画買うのもいいかげんにして下さいねー・・・」
「(ギクッ)ち・・・違うぞ松本! こ、これはなあ!
現世に潜んだ虚どもの暗号が隠されていて・・・
」
女子高生姿の盛りのでかい女性と、銀髪ツンツン頭の小学生の姿が見られたとかなんとか・・・
Fin.
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