「はあッ、はあッ、はあッ・・・」
荒い吐息を繰り返しながら、少年は柄を握る手に更に力を込めた。
二、三度軽く刀が交わっただけで、精神は根こそぎ搾り取られたように消耗する。
それは対峙した相手にしても同じことで、藍染も涼しい表情をしながらも、薄く汗が滲むのを自身でも感じ取っていた。
緊張に彩られた舞台の上で、誰もが彼らの一挙手一投足に着目する。
『至上の戦いは極上の舞いの魅力に似る』とは、かつて誰が言った言葉だったか。
この二人の戦いが舞いであるならば、目にした者は皆、舞う者の身体が止まるその終焉まで目を離せずにいる。
・・・生涯に一度、見られるかどうかの名勝負だと、誰もが思った。
そんな中、壇上のさらに高く配置された椅子で、少女は見惚れながらも身体を固くしていた。
「・・・っ! 何て凄い霊圧・・・! 浅打での勝負だというのに、こんな・・・っ」
「浅打だからこそ、だよ。斬魄刀の能力や鬼道に頼らない戦いだからこそ、純粋な技量が際立つ。・・・よく見ておくといい、雛森くん。・・・これが、隊長同士の・・・本気の戦いだよ」(王様・東仙要)
「すごい・・・これで・・・これで・・・」
「言うんじゃない・・・そう・・・気持ちはよく分かるけれども・・・」
「これで、あの二人が
女 装 で さ え な け れ ば ・・・!!
」(あふれ出る涙を拭いもせず)
「だから、それを言っちゃおしまいだってば!(汗)」(←でも自分は見えなくて良かったと心底思ってる)
『 シロデレラ 3 』
− ...AND LIFE GOES ON −
「・・・やれやれ。粘るね。・・・潰さないように蟻を踏むのは、力の加減が難しいんだ」(←格好つけてても女装)
「へっ・・・好きに言っとけ。てめぇこそ、歳のワリには頑張るなぁ、おっさん?」(←格好つけてても女装+鉄ゲタ)
「余裕のある振りをしていていいのかな・・・? 浅打とはいえ、僕に勝てると思うのかい?」
「思うさ。・・・俺は、絶対、勝つ」
「その自信はどこから来る? ・・・そら、汗をかいているじゃないか。分相応な発言を心掛け給えよ」
「てめえこそ・・・普段は眉間に皺なんて寄せてねえよな? 何だ、ビビってんのか?」
「・・・へらず口を。少しは分というものを理解して貰えば、静かになるかな?」
再び、澄んだ音を立てて二本の刀身がぶつかり合う。
そんな中、雛森いやモモ王子は苦しげに、その唇を噛み締めていた。
不安げに戦う男ふたりを見下ろし、胸のうちをふと零す。
「チャリティー演劇・・・武道大会・・・。・・・日番谷くん・・・。なんで・・・こんなことになっちゃうの・・・。浅打なんて・・・持たせなくていいのに・・・。平和な演劇なら・・・それでいいのに・・・。・・・藍染隊長・・・。・・・あたし・・・
そんなカッコして戦いなんてして欲しくないです・・・!
」
「・・・いや、あの、雛森くん?
きみが戦いの原因だっていう自覚はあるかい・・・?
(汗)」
・・・もはや演劇の域を超え、二人の男が意地と根性を懸けて、雛森を賭けて戦っていた・・・。
(↑ある意味、戦いの行く末は観客にとって演劇以上の見モノ)
鍔迫り合いの後、シロデレラと藍染はひときわ間合いを広く取った。
両者、刀を改めて構え、ひときわ濃い霊圧が二人の身体を纏う。
「・・・そろそろ終わらせようぜ。雛森をあまり待たせちゃいけねえ」
「・・・そうしようか。僕の雛森君に心配を懸けるのも心苦しい」
双方、不適な笑みが顔を彩る。これから迎える終局の果てに立っているのは、自分か相手か。
無論、それは自分だと、信じて疑わない笑みだった。
「君に雛森君は渡さないよ。・・・あの子は、僕のモノだ」
「そうか? そう思うのか? ・・・だったらそれが正しいのかどうか、今、ここで
・・・・・・ 決 着 を つ け て や ろ う じ ゃ ね え か ! 勝負だ! 藍染!!
」
「次の・・・一太刀。次で・・・決まるようだよ」
「藍染隊長・・・日番谷くん・・・どうか・・・無事で・・・!!」
キ ィ ン ッ ・・・・・・ !
彼女の祈りの中、渾身の力を込めて繰り出された刃が切り結んだ音が会場を包む。
行く末をその場にいる全員がかたずを飲んで見守った。
最後の一撃を繰り出した二人は、刀を振りぬいた姿勢のまま、ぴたりと止まっている。
・・・揺れたドレスの裾が止まった、その時。
「・・・くっ!?」
シロデレラの頬から一筋、鮮血が流れ出た。
「きゃあっ!?」
「目を背けてはいけない、雛森くん。よく・・・見届けなさい。盲いた僕の代わりに」
「・・・興醒め、だ」
藍染は刀を軽く振った。僅かに刃先に付着していた血が、飛沫となって床に模様を描く。
「興醒めだよシロデレラ。君がこんな程度だったとはね・・・僕も幾分、買い被りが過ぎたか」
「・・・果たして、そうか・・・? 藍染、自分の姿をよく見てみろ」
「何・・・?」
流血に顔を歪めつつも、シロデレラは満足げに微笑み、ゆっくりと刀を鞘に戻した。
かちり、と微かな音と共に、刀身が全て収まったその時。
「何ぃ・・・・・・っ!?」
藍染のスカートの下に、ぱさり、と、
ふ ん ど し が 落 ち た 。
「きゃあっ・・・って・・・えーと・・・藍染隊長のふんどしの色は青・・・と(メモメモ)」
「・・・いや、あの、雛森くん?
そこは目を背けるところなんじゃないかな?
(汗)」
「・・・やるじゃないかシロデレラ(ふんどし回収しつつ)。今回は僕の・・・負けだ」
「・・・俺、は、勝った・・・のか?」
「そう、君の勝ちだ。・・・モモ王子が待っているよ」
【第三回戦・結果】 ○日番谷 vs ×藍染 (5分42秒・ふんどし落下)
幾分寂しげに、(片手にふんどし持ちつつ)藍染は去った。
信じられない、という表情で、先の戦闘の余韻に浸るシロデレラの肩に、小さな手が添えられた。
「美しく強い方・・・ボクと踊ってはいただけませんか?」
「雛・・・いや・・・王子様、・・・はい、喜んで・・・」
『・・・こうして。モモ王子様の目に止まったシロデレラは、武道大会いえ舞踏会で夢のようなひと時を過しました。しかし幸せな時間は早く過ぎ去るもの。時計の針が、十二時を指したのです・・・』
・・・ ボ ー ン ・・・ ボ ー ン ・・・ ボ ー ン ・・・
「ああっ、もうこんな時間です、帰らなくては・・・!」
「待ってくださいシロデレラ! ボクは、貴女を妻に・・・」
「わたくしの事はお忘れになって・・・! さようならモモ王子様・・・!」(←勝利の余韻で必要以上にノリノリ)
「(
・・・日番谷くん・・・おネエ言葉似合わない・・・
)待って・・・!」
「さようならーーー!!!(・・・何か順調に行っててかえって気持ち悪い感じだぜ・・・。まあいい、この後は俺が落としていく鉄ゲタを手に、雛森が俺を探し出してくれるんだ。その時こそ俺が待ち望んでいたハッピーエンド・・・!)」(←そのまま舞台袖に下がる)
『シロデレラを追って外に出た王子様が見たものは・・・ただひとつ、鉄ゲタの片方のみでした』
「・・・・・・シロデレラ・・・・・・(ぎゅっ)」
『遺されたゲタを手に、王子は一つの決断をします』
「(ワクワク)・・・よーし、ちゃんと俺を探しに来いよ雛森・・・!」(in 舞台袖)
「シロデレラ・・・ボクは決めました。生涯・・・心の片隅に、貴女の面影を置いて生きてゆきます・・・!」
「
・・・ ・・・ 何 ぃ ?
」
「たとえボクが誰と結婚しようとも、常に心は貴女を想っています・・・。
さようなら、ボクの美しい人・・・。さようなら、ボクの初恋・・・!」
「ちょっと待
ム グ ア ッ ! ?
」
「・・・あァ、こらあかん」
「(い、市丸ーー!?)」
「・・・あかんなぁ・・・主役は台本(ホン)変えるのにいてんのとちゃうやろ」
「(やっぱりテメエ、筋書き変えやがったなー!? 放せえぇー!!)」
「あ・か・ん・て。コレは王子の青年期に残る、甘やかな棘にまつわる話なんや。せやから、切な〜くこのままエンディングを迎えて
オ ・ ワ ・ リ ☆
」
「
( 何 だ と ー ー ー ! ? )
」
『こうしてモモ王子様はシロデレラを甘美な記憶として遺し、妻を娶った後も王として民衆に慕われたということです・・・めでたしめでたし。
・・・以上で護廷十三隊チャリティー演劇 < シロデレラ > を終了いたします。
皆様、お忘れ物のないようお帰りください・・・』
「
( 終 わ っ て ん じ ゃ ね ぇ ー ー ! ! )
(マジ泣)」
「大人しくしとき? ホラ、観客も喜んでくれてはることだし」(にやぁーり)
パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ !
ワ ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ッ !
「(しかもスタンディングオベーションかよ! いいのかそれで!?
畜 生 今 回 も 騙 さ れ た あ あ ぁ ぁ ぁ ・・・ ・・・ っ ! ! !
)」
☆ STAFF & CUST ☆
シロデレラ:日番谷冬獅郎
モモ王子:雛森桃
王子の従者:一番隊副隊長
王様:東仙要
シロデレラの継母・影の女帝:卯ノ花烈(友情出演)
姉その1:松本乱菊
姉その2:阿散井恋次
アキコ姉ちゃん:虎徹勇音(特別出演)
魔法使いさん:朽木白哉
御者:伊勢七緒
馬車その1(老マッチョ):山本元柳斎重國
馬車その2(素でマッチョ):更木剣八
馬車その3(ふんどしマッチョ):射場鉄左衛門
馬車その4(毛マッチョ):狛村左陣
馬車その5(ムダ毛マッチョ):京楽春水
シロデレラのライバル1(負け犬):吉良イヅル
シロデレラのライバル2(噛ませ犬):佐藤(仮)
前座その1:檜左木修兵
前座その2:砕蜂
偽シロデレラ:浮竹十四郎
司会その1:草鹿やちる
司会その2:大前田希千代
解説マン:涅マユリ
ナレーション:涅ネム
衣装:綾瀬川弓親
ヘアメイク:斑目一角
広報:小椿仙太郎・虎徹清音
AD(という名のパシリ):山田花太郎
宴会要員(という名のみんなのオモチャ):荒巻真木造
音声:阿近
医療班:伊江村八十和・萩堂春信
脚本:市丸ギン
監督・製作総指揮・シロデレラの永遠のライバル:藍染惣右介
Fin ?
● おまけ ●
その夜。
全隊あげての追加公演の成功を祝い、盛大な宴が催されていた。
(財源:一番隊副隊長のボーナス)(←山本総隊長が勝手に天引きした)
そんな中、見事主役を演じきった日番谷はというと。
宴会の喧騒を逃れて、屋根の上で月を眺めつつ、藍染と杯を傾けていた・・・。
「・・・まあ、飲みなさい。お疲れ様だったね」
「・・・ども」
「まだ、怒っているかい? 済まなかったね、色々と」
「・・・別に。終わり方こそあんなだったが、きちんと『王子様』と『シロデレラ』として舞踏会演じられた訳だし、別に怒ってなんかいねえよ」
「じゃ、むくれているように見えるのは、僕の気のせいかい?」
「・・・藍染」
「ん?」
「お前、手、抜いたろ」
「・・・どうして、そう思う?」
「正直、今の俺じゃ実力でアンタには勝てねぇ。悔しいが・・・それが現実だと思う」
「そうかな? 君が強くなったのかも知れないよ?」
「自分の力量ぐらい自分で心得てる。・・・わざと俺に勝ちを譲ったな?」
「さあ・・・ね。・・・頑張ってチャリティーに貢献してくれた千両役者にサービスしたのかも知れないし、・・・単なる気まぐれだったかも知れないし。・・・ご想像にお任せするよ」
「・・・ずっりぃの」
「何とでも。でも、危うかったのは確かだよ」
「それはどーも。・・・あんま、褒めてもらった気はしねえけどな」
「ははっ。・・・あと、もう一つ」
「なんだよ」
「いつも君に勝ちを譲るとは限らないから」
「・・・っ! は・・・っ。タヌキめ」
「好きに言うといいよ。僕には僕の事情がある。雛森君は渡さない」
「上等。そっちがその気なら、俺も全力でかかるだけだ」
「待っているよ。・・・ま、とりあえず今日は」
「腹黒いタヌキと」
「ピンクのドレスが似合った少年剣士に」
「「 ・・・ 乾 杯 」」
か ち ん 。
「あーっ! やっと見つけたーっ!!」
二人が猪口の酒を飲み干した時。屋根にかけたはしごを登って、雛森がちょこんと顔を出した。
「ずいぶん探したんですよ! あーっ! 日番谷くん、お酒飲んでる! ・・・全くもう、いっくら強いからって、飲んでいい歳じゃないでしょー!? 乱菊さんにいいつけてやるんだから! 藍染隊長も藍染隊長ですよ! 全くもう、こんなに飲ませて!」
日番谷と藍染を見つけるやいなや、まくし立てる雛森を見て。
「「 ・・・ ぷ っ 」」
思わず二人は吹き出した。
「何笑ってるの二人とも! ちょっと、何がそんなにおかしいんですかー!?」
男達の想いなど知らず。
永遠の姫君の声だけが、月夜に響いていた・・・・・・。
Fin !
HOME
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送